【2016年11月11日】「2016折込広告全国大会」(主催:日本新聞折込広告業協会)が11月10日、東京都千代田区の都市センターホテルで「『パラダイムシフト』を考える~未来に向けたオリコミの可能性を探る~」をテーマに開幕し、「研修会」と「情報交換大会」が行われた。今日11日午後1時からは、本大会と基調講演、懇親会が開催される。
初日の「研修会」の「第1部・事例報告」では、地域メディアに関して講師2人が登壇した。
また、講演を行った講師を含む4人のパネラーとモデレーターによるパネルディスカッションも行われた。
「印刷会社が取り組む地域活性ビジネス」
日本印刷技術協会(JAGAT)藤井建人研究調査部長
現在、印刷会社はさまざまな「地域活性ビジネス」を行っている。
「地域活性ビジネス」は、ビジネスとボランティアの間に相当するもの。
なぜ、印刷会社がこのような事業を行っているのか。
それはかつて日本の経済成長で発展していた地域経済が、経済成長の減速により、厳しい状況が続いているからだ。
どの地方の企業も、自社の経営とともに地域を活性化し、成長していくことが必要になっている。
さて、印刷会社の置かれた状況は以下のようなものだ。
「BtoBのため、地域住民からの知名度が低い」
「イメージは3Kのオールドメディア」
「需要構造は人口と景気に影響される」
「営業姿勢は受け身体質」
そこで、印刷会社では地域のニーズを掘り起こすために「地域活性ビジネス」の一環としてフリーペーパーの発行を始める会社が増えた。
これは折込とも関連が深い事業だ。折込は、綴じ加工すればフリーペーパーとなり、値段をつければ雑誌となる。
過去の統計を見ると「印刷産業」と「百貨店」は、同じ景気動向にある。いずれも外的要因に影響されやすいのが特徴だ。
自らコンテンツを持たないと、振り回されやすいともいえる。
JAGATでアンケートを行った結果、回答した印刷会社の6~7割が、地域課制に取り組んでおり、取り組んでいない会社でも、取り組まなければならないと考えている会社は多い。
ただし、地域活性ビジネスは持ち出しが多いのも事実で、すぐに収益化するものでもない。
アンケートでは「今後やりたいこと」として「まちづくり系」を挙げており、「予算をもらう側から分配する側に回りたい」という考えがある。
広島県の総商さとう(書店)では、高齢者の年賀状の宛名を書き代行から翌年は印刷の仕事に乗り出した。
茨城県の岡野印刷では、「街ナビ」という媒体を出したところ、地元出身の女子プロレスラーから話が持ち込まれ、プロレス興行まで行っている。
愛媛県の原印刷では学校向けのフリーペーパーを配布しているが、これは広告なしだ。県内の245社が協賛し、県内企業と学校をつなぐ媒体として活用している。
学生は卒業しても県内の就職先が分からず、企業は優秀な人材の県外流出に困っていた。
ここで言えることは「情報は発信するところに集まる」「みんながハッピーになるような、情報とお金の流れを描くことが重要」ということだ。
広告には「効果」が必要だが、地域活性には「共感」が必要。そのモデルをいかに打ち出すかが必要となる。
他の講演とパネルディスカッションは別掲
レポート「2016折込広告全国大会」② 「北海道食べる通信~十勝毎日新聞社が取り組む新しい地域メディアの意義」 グリーンストーリープラス 林真由氏につづく